脳力のレッスン
187/200
- 作者: 寺島実郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/12/03
- メディア: 単行本
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久々の読了である。
相変わらず、本を10冊ほど同時進行読みしており、なおかつ最近は会社の行き帰りも眠くて眠ってしまうことが多いせいか読書量が落ちている。
この本は、実は3年越しくらいで読了した本である。
本の半分くらいまでは大学生時代に読んだ。はっきりいってあの頃はそこまで心に響かなかったのか、途中で投げ出してしまっていたが、いま読むと非常に興味深い内容である。
本書の中身は、基本的には『世界』という雑誌に連載されている氏の原稿をまとめなおしたものである。この本を読むまでこの雑誌の存在すら知らなかった。
この人の本は地政学的視点と歴史的視点の両方を併せ持っていて面白い。
本書の隅々に興味深い内容が散らばっているが、本書の中では氏の脳力に関する記述が印象的だったので引用しておきます。
自分の人生を振り返って、あるいは先たちの人生を調べてみて、物事を真剣に考えようとするきっかけになったのは「人間との出会い」、つまり魂を揺さぶられるような生身の人間との出会いであることに気づく。
本来、教育とは体臭が匂うような至近距離において、若者を突き動かすような存在感を放つ「大人」がなすものであった。教壇に立つ教師だけでなく、親兄弟や親戚、学校や職場の先輩が熱い存在として、若者の未熟性を自覚させ、真剣に考える契機を与えたものである。「反面教師さえも含め、明らかにそういう存在がなくなっているのである。
上記のようなことは確かにいえるのだろうが、両親や上司を素直に尊敬できていない自分自身の考え方にも問題があるとも感じている。
ちなみに、このような時代にどのように脳力を磨くのかというと寺島さんは「歴史軸」と「空間軸」をあげている。
「歴史軸」の中での自分の位置づけを確認する努力。
過去の先人たちが格闘したテーマや事実を確認するうちに人間は謙虚になる。
謙虚さ、これは大事だと思う。ちなみに謙虚と遠慮は違うということは忘れないようにしなければならない。
「空間軸」の中での思索、すなわち広い世界の中で自分の生きている国や地域がいかなる特色を持つものなのかを確認する営為である。
これをすることによって、思考の重心がさがるのだとか。確かに、僕ら日本人は日本に住んでいる限り恵まれすぎていてなかなかそれぞれの国で起こっている事件が理解できていない。これは思考の重心が高いからなのだと感じた。
いずれにしても、寺島さんのような考え方を身につけたいと感じる今日この頃です。
最後のあとがきにのせられていた、寺島さんの母親のメモ書きにあった詩がまた素晴らしい。
「踏まれても 根強く忍べ 道芝の やがて花咲く 春こそ待て
上見れば 及ばぬことも 多かりき 笠着て暮らせ 人の世の中
下見れば 吾に勝れる 人も無し 笠取りてみよ 空の高さを」
思考の重心をさげるとはまさにこの詩の精神を語ったものではないだろうか。
僕もこういう先達の精神性にもっと感化されたいと感じます。
そのためにも、もっといろいろな書と人々から学ばないといけないと日々痛感する今日この頃なのです。